spatium artis ( 2014.12.22 updated )
Federico Gonzaga, Duque de Mantua
  マントヴァ公爵フェデリコ・ゴンザーガ
1529
Oil on panel,
125 x 94 cm
Museo del Prado, Madrid

【部分図。クリックにて拡大】

■梗概

 ティツィアーノが注文を受けて作成した肖像画の傑作のひとつ。
 当時このフェデリコ・ゴンザーガ(1500-1540)はティツィアーノのパトロンであり、ティツィアーノは彼の注文によって複数の作品を完成させた(しかし現存するものは《兎の聖母》ひとつとされている)。
 ティツィアーノの肖像画はたんに被写体を自然のままに描くのではなく、まるで「真実の鏡」のようにモデルの性格を浮き彫りにさせてしまう恐ろしいところがあるが、この作品もその一つである。

 なお、フェデリコ・ゴンザーガは、ヴェルディの歌劇《リゴレット》に出てくる好色で軽薄で利己的で放蕩なマントヴァ公爵と大きな関わりがある、ように目されているが、《リゴレット》の原作となった体制批判的なユーゴーの『王様はお楽しみ』の内容が検閲に引っかかり換骨奪胎された中で舞台がフランスから北イタリアに移され、登場する王様がフランソワ一世からマントヴァ公爵に変えられたことによるものであって、半分濡れ衣みたいなところがある。


わずかに傾けた頭、小さな口、そして酷薄そうなまなざしを見るにつけ、この公爵(この絵画が制作された翌年1530年にマントヴァ公となる)の冷酷な性格を感じざるを得ない。

服装が高貴でかつその紺色が落ち着いたものであるだけに、余計に表情のメッセージ性が引き出されている。

佩いた剣、そして刺繍は黄金の輝きがあり、光の描写の表現、質感表現は驚くばかりである。

後の世のベラスケスを彷彿ともさせる。


このテリア種のようにも、アナグマのようにも見える犬は、やや浮腫んだようなフェデリコ・ゴンザーガの手によって守られている。犬は落ち着かず、公爵の服に爪をかけようとしている。いわゆる「過保護な犬」であることが見て取れる。
ここには公爵の享楽的傾向が図らずも表現されており、先のまなざしの表現と並んで、ティツィアーノの「毒」のようなものが見て取れる。
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